毎日、しらとりが書いて、まるやまが描くブログです。

2011年5月10日火曜日

4/3 寄付に御利益は宿るのか






2011年
4月3日(日)
仙台快晴





寄付に御利益は宿るのか



菓子パンPJ 2日目。

新潟にて朝6時起床。

バスで4時間眠り続け、13時前に仙台到着。

大量のパンを抱え、まずは病院へ向かう。



祖父は来月97歳だ。

このくらいの人が肺炎になると普通はまず助からない。

しかし、医者もあきれるほどの驚異的な回復を見せ

肺炎が治り、点滴も取れ、言葉もハッキリしてきた。

生への圧倒的な執着だろうか。

溢れんばかりのタフネスだ。

とても血がつながっていると思えない。



病院で若林区の区長をしていたYさんに会えたので

菓子パンPJのことを相談する。

回ろうと思っていた避難所の地図を見せると

「6カ所も回れるかな、、、受け付けてるかもわからないよ、、、」

と言われてしまった。

Yさんは指導的な立場で現場と関わっているので

この個人的なボランティアを手放しで歓迎してくれはしなかった。

「とにかく回ってみて、ダメだったら他の手を考えます」

相談しない方がよかったかなと思いながらそうと言うと

「知り合いが六郷中学校の避難所にいるから聞いてみる」

とその場で電話をかけてくれた。

六郷中学校は400人近い人たちが生活している巨大な避難所。

菓子パンは305袋あるので、全部あげてもちょうどいい規模だ。

ただ、多くの避難所を回りたかったのと

みんなのお金を預かっている立場なので

寄付する先を急に変えてしまっていいものか

すぐにはふんぎりがつかなかった。



考えたすえ、とにかく六郷中学校へ行ってみることに。

タクシーで駅から20分。

たしかに大きな学校だ。

校庭には避難者の自家用車と自衛隊のトラックが並んでいる。

自衛隊のテントも設営されていて、濃いグリーンがものものしい。



ちょうど子供連れの母子がいたので

「東京から菓子パンをたくさん持ってきました。

もしよかったら直接渡してもいいですか?

まわりのみなさんで分けていただければ…」と聞くと

「受付はあちらです」とあっさりかわされてしまった。

アハハと笑顔で背筋を伸ばし(なるべく好印象)

一緒に避難場所になっている体育館へ。



歩きながら娘さん(小学校低学年2人)に

「チーズケーキやワッフルもあるよ〜」と言うと

「キャー、スイカ—!スイカ食べたいー!」と喜んでくれた(?)。

お母さんに「欲しいものや手に入らないものありますか?」と聞くと

「パンが食べたくて、ちょうど今買ってきたところです」とのこと。

たしかにお母さんの手にはコッペパンのはいったスーパーの袋があった。

子供たちはスイカ食べたいーと言ってスキップしていた。

無邪気な笑顔にキュンとくる。



体育館の前には門番のように自衛隊員が立っていて

よそ者の自分はなんだか気まずい緊張感。

ガラガラと鉄のトビラを空けてもらい中に入ると

入り口の両側が受付になっていた。

勝手に入ったり、素通りはできない感じだ。



館内ではちょうど自衛隊の吹奏楽団が演奏中で

喧噪とあいまってコトバがよく聞き取れない。

ブンブカ、ドンシャン、ワーワー、ガヤガヤ。

いろいろな目的の人が来ているようで、受け付けも煩雑だ。

やっと自分の番が回ってきて

「菓子パンが300個あります、食べてもらえますか?」と聞くと

「ここに名前を書いてください」とノートを出された。

受付の人は帽子に眼鏡、大きなマスクをしているため表情がわからない。

名前と住所を書いていると

さっさとパンが運ばれて行く(勝手に持って行ってしまう)。

ああ、ちょちょちょっと待って〜。



もう、あの、こんな大変なときにいきなりすいません。

えっと、ボクは東京からパンを持ってきたんですけど

友だち同士でお金を出し合って用意したんです。

なので、ほんと個人的なあれで申し訳ないんですが

その、メッセージカードなんかも作ってきていまして

こんな感じで、ね、ここにみんなのメッセージが入ってるんですけども

もしよかったらパンと一緒に渡してもらえませんか。

めんどくさいこと頼んじゃってすいません。

でも、あの、パン、受け付けてもらえてよかったです。

え、カンパンじゃなくて菓子パン、菓子パンなんで

はい、はい。

チーズケーキ的なものもあるので、はい

まだ日持ちしますので、よかったら皆さんで召し上がってください。

え?(吹奏楽の音で話がよく聞こえない)

あ、はい。あ、オレ?

ここじゃまね。すいません。

また来たいとも考えてますので、はい、ではよろしくお願いいたします。

はい。失礼します。

それでは。



頭をさげ、空になったキャリーバックのチャックを閉める。

あっという間に終わってしまった、という感じ。

「自分はありがとうと言われたくて寄付活動をしていたのか?」

思わずそんな風に考えてしまい、嫌な汗がドバッと出る。

立ち上がり館内を見回すと

先ほどの母子が座っているのが見えた。

子供たちは行儀よくイスに座って演奏を聞いている。

もっと中に入ってみたいと思ったが

受付にいる人や自衛隊員たちに真顔で見つめられると

「他に何か?」と言われているようで足が動かなかった。

立ち入らないのが礼儀にも思えた。



メッセージカードには連絡先を書いておいたので

もし、こういう差し入れを必要としてくれるならきっと連絡してくれるだろう。

今、無理に何かを確かめなくてもいいんじゃないか。

自分にそう言い聞かせながら外へ出た。

外へ出ると、背後で扉の閉まる音がした。

重い金属がぶつかり合う音だった。













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