仕事帰り、中野行きの東西線は空いている。
ほろ酔いの会社員やOLが
だらしなくシートに埋まりながら
赤ら顔でケータイをいじっている。
いつもながら光景だ。
普段は基本的に露出の多い女性しかチェックしないのだが
その日は落ち着きのないスズメのように辺りを見回してしまった。
まず、右前方のサラリーマンが
右手で鼻くそをほじり始めた。
嫌な気持ちで逆サイドに視線を移すと
そこそこ可愛いOLが、右手で鼻くそをほじっていた。
偶然のシンクロに驚きつつ
自分と同じ列に座っている右側のサラリーマンを伺うと
やはり右手で鼻くそをほじっている。
左側には得体の知れない柄シャツを着た初老の男性が座っていたが
これもまた右手で鼻くそをほじっていた。
4人とも右手で鼻くそをほじり、左手でケータイを見ている。
つまり4人の指が同時に鼻の穴に突き刺さっているわけだ。
いったい誰が最初に指を引き抜くのか。
その指はどのように処理されるのか。
食べるのか、拭くのか、そのままか。
そしてこの鼻ほじりユニゾンはいつまで続くのだろう。
鼻電車にゆられ、4人を夢中で見回しながら
僕の右手の人差し指は
いつしか鼻腔へと伸びていた。
5人目の奇跡を成し遂げるために。
0 件のコメント:
コメントを投稿