2011年
7月10日(日)
ライブすっぽかし
SUNDAY DREAM
部屋を片付け、パスタを作り、風呂に入った。
髪を乾かし、服を着て、出かける用意をしていると
暗闇がドロリとあふれ出し混合爆発を起こしてしまった。
体が固まり、動けない。
キンキンにクーラーの効いた部屋なので
自分がどんどん凍っていくのがわかる。
すでに足の感覚がない。
あの子が「ただいま」と言って帰ってきた。
僕は泣きながら彼女を抱きしめた。
しかし横にはもう一人彼女がいて、こちらを見ながら泣いている。
僕は違う女性を抱きしめているのかと思い体を離すけど
腕の中にいるのも確かに彼女だった。
横にいるもう一人の彼女の顔が変わった。
ゆがみ、ただれ、ついに絶叫した。
僕はあわてて抱きしめ
「これでおしまいだ。もうなにもかもおわった」
と祈るように伝えた。
すると今度は先ほどまで抱きしめていた彼女が叫び声を上げ
走って部屋から出て行ってしまった。
追いかけて部屋を出たとたん
僕は目が見えなくなってしまった。
さっきの部屋からはもう一人の彼女の泣き声が聞こえてくる。
手探りで引き返すと、視力はあっけなく元に戻った。
しかしそこにはもう誰もいなかった。
「ただいま」といった彼女の笑顔を覚えている。
頬のしっとりとした感触や、濡れた舌先も。
でもそれは達成と同時に終わってしまったのだ。
部屋には優しいヤツがいて
後ろからそっと肩をさすってくれた。
僕らは手を重ね、無言でじっとしていた。
これが彼女だったらいいのにと思った。
振り向くと、目玉のくり抜けた自分がいた。
真っ黒い眼窩の分身は、僕を見てニタリと笑った。
打たれたような恐怖。
大声が出そうなところを何とか飲み込み
(大声を出したら負けだと思った)
目玉のない顔を何度も何度も全力で殴った。
血や体液や肉の欠片がシャワーのように飛び散り
生暖かい張りぼてのような分身は
ぐにゃりと倒れて動かなくなった。
ぐにゃりと倒れて動かなくなった。
ドアの隙間から
彼女がこっそり覗いているのが分かった。
とてもおびえているようだった。
もうなにもかもおしまいにしよう。
そう思い、倒れた自分の右眼に両手を差し込んだ。
眼窩はメリメリと広がり、手はズブズブと飲み込まれていった。
このまま中に入れそうだと思ったとき
持ち主を失った絶叫が
かすかに聞こえたようだった。
かすかに聞こえたようだった。
0 件のコメント:
コメントを投稿