2月23日(水)
晴れ
練馬のビヨンセ
久しぶりに会った練馬のビヨンセは
ママチャリに乗って東中野に現れた。
あのデカくて汚い
いつものマウンテンバイクではなかった。
なんの変哲もないただのママチャリには
うっすら寂しさがコーティングされているようだった。
実際そうだったのかもしれないし
自分が寂しかったからそう見えたのかもしれない。
いずれにせよ
センチメンタルは今夜も大盛りだ。
センチメンタルは今夜も大盛りだ。
ビヨンセはめずらしく露出が少なめで
パンツも乳も見えてはいなかった。
太っても、痩せてもいない感じだった。
「静かなところで話をしたい」
「ワインが飲みたい」
といわれたけれど
といわれたけれど
駅の近くの居酒屋に入ってしまった。
「あっちにスペインバルが…」
ビヨンセはそう小さくつぶやいていた。
店はとても混んでいて
ビヨンセはさらにがっかりしたようだった。
「多くない? ここ。なんで? 多くない?」
とコートを脱ぎながら連呼していた。
悪いことしたかなとちょっと思った。
「ほら、ワインあるよ」
「わたし赤だけど」
「デキャンタでいい?」
「えっ? あー… いや… あー…」
「赤のデキャンタと生ビールください」
「え、グラス? え、いーけど」
「あとこの鍋セット」
「え、あたし、ぜんぜん、食べないけど」
「1人前でもいいですか?」
「へー鍋、一人前、できるんだへー」
「ハラへっちゃってさ」
「うん、ぜんぜんあたし、ぜんぜんだから」
「もうメシ喰ったの?」
「ってゆーか、ほら、食べたかって、ほら」
「そっか、まあつまんでよ」
「うん、ぜんぜん、食べないけど、ありがとう」
「で、最近どうなの?」
「どう? どうって? どうってなにが?」
「ほら、家のこと」
「んー、まー、んー、まー」
「少しは落ち着いた?」
「いや、落ち着いて、落ち着いて、な〜ん…」
「そっか、まだ半年だもんね」
「んー、まあ、ね」
「とりあえずカンパイ」
「あ、おつかれさまでーす」
結局つまみを喰いながら
ひとりっこ同士の親問題を語り合い
ビヨンセはママチャリで帰って行った。
自分はコンビニでビールを半ダース買い
ぜんぶ飲んで歯を磨いてから寝た。
センチメンタルが大暴走だった。

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