2月16日(水)
晴れ
左がチャーミングー
ライターすらつけられない。
あまりに左手が不器用なので病院へ行くことにした。
「手が、思うように動かないんです」
すると左側診療内科という左専門の医者を紹介され
レフティーインザライトという診断テストを受けさせられた。
左手でボールを投げ、左手で箸を使い、左手で文字を書く。
もちろんうまくできるはずがない。
結果、<左手退化症候群>と診断された。
<左手退化症候群>とは初耳だったが
実は太古の昔から存在する病気らしい。
数々の憶測を生んできたミロのビーナスの両腕も
最近の学説では<左手退化症候群>の仕業ではないかといわれている。
また座禅の組みすぎで手足がなくなったとされる菩提達磨も
<左手退化症候群>が全身に転移したという説が有力なのだそうだ。
<左手退化症候群>はその名の通り、左手が退化してしまう病気だ。
時が経つにつれ不器用になり、思うように動かなくなる。
おまけに数ミリずつ縮むので、やがて左手そのものが消滅するらしい。
そういえば僕の左手も心なしか小さくなっている気がする。
「僕の左手はなくなってしまうのでしょうか?」
「このまま悪化すると危険です」
「手術や治療で治りますか?」
「残念ですが、今のところ確実な治療法は見つかっていません」
「すると左手がなくなるのを指をくわえて見ているしかないと…」
「そうとも言い切れないところがこの病気のチャーミングなところです」
「チャーミング?」
「そうです。実にチャーミングな病気なのです」
チャーミング・・・
刻々と 失われ行く 左手の
サムズアップな 遺影を パシャリ
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