4月19日(日)
今日はきゃりーぱみゅぱみゅ氏の仕事だ。
六本木のスタジオで、
撮影の合間にインタビューをする。
なんと呼べばよいものか。
きゃりーさんで失礼はないかな。
などと考えながら奥の部屋のドアを開けた。
車の撮影もできるほど大きなスタジオには、
贅沢なライティングがセットされていた。
蛍光灯を縦に立てたような、青い照明だ。
誰が何の関係者なのか分からないくらい、
たくさんの人がうろうろしている。
自分も一緒になって、
そこら辺をうろうろしてみる。
ピカピカの靴を履いてる人が多いことに気がつき、
トイレでスニーカーを少し磨いた。
メイクを終えた主役が現れると、
皆が口々に「オネガイシマース」と声を張り、
スタッフたちが持ち場に着く。
私は原稿を書くという名目があるので、
かまわずうろうろし続けた。
一流の仕事がテンポ良くはじまり、
一流の会話が飛び交う。
我が身をみじめに思う必要は無い。
メインステージに立てなくたって
舞台袖を胸を張って歩けばよいのだ。
そう思って胸を張り、
ゆっくりうろうろし続けた。
撮影が半ばに差し掛かった頃、
インタビューのタイミングが
2回あることを知らされる。
もちろんポーカーフェイスでうなずく。
さあどうぞと唐突にバトンを渡され、
それではよろしくと挨拶を交わし、
一回目のインタビューがはじまった。
音楽の一発撮りのように、
よどみなく、過不足なく語り、
見事な着地を決めてくれる。
聞き直したり、聞き足したりする必要がない。
あっという間だ。
3分もかからなかっただろう。
これが400字以上の原稿になる。
次の出番を待つ間、
スタッフの中でいざこざが起こった。
「ぶっ殺すぞこの野郎」と罵る人と、
罵られてもシカトしている人。
状況はよく分からなかったが、
なぜかシカトしている奴の代わりに、
私がどうもすみませんと謝った。
残念ながら効果はなかった。
2回目のインタビューがはじまる。
さあ、おまえ、ライターだろ、
面白いことを言え。
という雰囲気の中で、
実際に声に出してそう煽られる。
あんたたちは敵なのか?
でも大丈夫。ネタは考えてきた。
息苦しいのは人が多すぎるからだ。
第一声がかすれたのは空調のせいだ。
間近に座ると、
抜けるような白さがさらに際立つ。
一流の美肌だ。
かの松田聖子氏もケタ違いの白さだという。
しかしそんなことは話さない。
話してはいけない。
本題を切り出すと、先ほど同様
よどみがなく答えてくれる。
単語ではなく、すべてストーリーで
語ってくれ、話題も面白い。
だから人気者なのだなあと思うが
もちろんそんなことは言わない。
言う必要がない。
今朝はなにを食べたのか
昨日の夜はなにをしていたのか
今日このあとの予定は?
どうでもいいことを聞きたくなるが
私は常識ある社会人なので
もちろん私利私欲には走らない。
走れるわけがないのだ。
ただ胸の中で
ありがとう
ファンになりました
応援します
と強く念じ、
30分弱の仕事が終了した。
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