4月30日(土)
野方散策
ラレリルレロレロ
道のど真ん中に
パンツ丸出しで座り込んでいるギャルがいた。
通行人はみな彼女をよけながら歩いている。
駅前なので人通りも多い。
誰もがチラッと振り返り
クビをかしげながら通り過ぎてゆく感じ。
あきらかにナニかがアレだ。
ボクはKちゃんが銀行に行っている間
10mくらい離れたところから彼女を観察することにした。
ギャルは小柄でやせ形。
背丈は150cmないくらいだろうか。
あらわになった足は色白。
M字開脚気味に女座りしているので身体は軟体。
パンツはピンクで黒のレース付き。
薄汚れたキティちゃんのサンダルを履き
髪は脱色されすぎてもはや何色か分からない。
ピンクのエクステが数本よれよれとぶら下がっている。
なにやら一人言を言っているようで
身体は前後左右にゆらゆら揺れている。
やはりあきらかにナニかがアレだ。
自転車に乗ったおばさんが
一度通り過ぎ、自転車を止めた。
まるで小さな不幸の塊でも見つけてしまったかのように
哀れむような眼差しで彼女を見つめている。
ケータイをチェックしているふりをしながら観察を続けていると
おばさんがゆっくりと彼女に近づきはじめた。
もしかしたら話しかけるのかもしれない。
傍観していた人たちは息を飲み
あたりにピリッと緊張が走る。
おばさん、話しかけて、大丈夫か?
と、その時。
ふいに静寂が破られた。
「てんめぇ〜 いつむぁで ぷりゅげじゃんだ どえ〜〜〜〜」
突然ギャルが大声で叫び出したのだ。
おばさんはビックリして自転車ごとよろめいている。
いったい誰に向かって叫んでいるのだ。
するとセブンイレブンから
「おめぇ〜も まじうるしぇ〜から てかわり〜〜〜〜」
と同じような叫び声が聞こえてきた。
こだま? ケンカ?
一斉にハテナが飛び交う中
座り込んだ少女の元に
同じような出で立ちのギャルが走り寄ってきた。
小さくて色白、髪の毛は野良犬のようにパサパサ。
座っている子よりややぽっちゃりしていて
眉毛がまったくない。
まるで闇金ウシジマ君の世界だ。
ってことはこういうことか。
彼女は友だちがコンビニに行っている間
道に座って待っていたわけだ。
まじだるいし、とかなんとかいう理由で。
別に意味もなくひとりで座り込んでいるわけじゃなかったんだ。
そうかそうか。それならまあよかった。
しかしなんでまた2人ともフラフラなんだ。
まっすぐ歩けてないよ、君たち。
うわ、座ってた子、前歯がギザギザでまっ黒じゃないか。
ますますウシジマ君ワールドだ。
でも見たところ中学生くらいだし
酒飲んでるわけじゃないんだろうし。
やっぱあれかな、シンナーかな。それとも●●かな。
いや〜しかし
パッと見からして危なすぎる。
と、2人を観察しながら横を通り過ぎ、駅へ向かう。
すれ違い際、座っていた女の子と目が合ったが
間違いなくロンぱった目をしていた。
数歩歩いたところで、背中に悪寒が走った。
小走りでコチラに向かってくる足音がするのだ。
ペタペタペタペタ近づいてくるのがわかる。
あの2人に間違いない。
キティちゃんサンダルの音だ。
しかも自分の背中めがけてまっすぐきているようだ。
まさか刺される?
咄嗟にそんなイメージが脳裏をよぎった。
理由は「目が合ったから」。
う〜ん、なきにしもあらず。
もうすぐ手が触れる距離だ。
くそ。
ギリギリのところで意を決し
バッと振り向いてみた。
予想通りラリホーギャルが目の前にいて鳥肌が走る。
といってなにかをしてくるわけではなく
ヘラヘラとにやつき
ヨヨヨと道を蛇行しながらコチラを見ているだけだ。
いったいなんなんだ。
得体の知れない恐怖を感じつつ
また前を向き早足で歩き始めると
すかさずペタペタ距離を詰めてくる。
振り向くとヘラヘラでヨヨヨのヨ。
スタスタ、ペタペタ、ヘラヘラ、ヨヨヨ。
スタスタ、ペタペタ、ヘラヘラ、ヨヨヨ。
逃げ込むように駅に入り
まさか着いてこないだろうなと振り向くと
駅前に立ち止まってコチラを見ている彼女がいた。
やっぱりオレを見ていたのか。
不吉な予感で手がべたつく。
ニヤリと笑った彼女の口からは
漆黒の闇が流れ出しているようだった。
金縛りにあったように数秒見つめ合ったあと
やっと回れ右をして電車に乗った。
電車の中でふと足下に目をやると
ピンクの髪の毛が靴に巻き付いていた。
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