毎日、しらとりが書いて、まるやまが描くブログです。

2010年2月12日金曜日

2/10






2010年
2月10日(水)
晴れ






「これ以上飲むと、まちがいなく明日が台無しです」

「さあ、あなたが選ぶボタンはどっち?」

真夜中のレフリーがコールする。

酩酊した頭の中で、ふたつのボタンが明滅している。

ひとつは「ケンゼンボタン」で、もうひとつは「ダイナシボタン」だ。

もちろん僕は「ケンゼンボタン」を押したいと思う。

健全な時間に帰って、健全な明日を迎えたいじゃないか。

迷いはない。





ところがどうも様子がおかしいのだ。

いくら「ケンゼンボタン」を連打しても

全自動のようにおかわりを注文してしまう。

「モヒートッ、モヒートッ、カイピロスカッ」

あぶない。それはだめだ。ウォッカじゃないか。

酩酊した頭の中で、もう一度ふたつのボタンを点検する。

ひとつは「ダイナシボタン」で、もうひとつも「ダイナシボタン」。

っておいおい、はなしが違うぞレフリー。

ひとつは「ケンゼンボタン」のはずじゃあ…





「フフフフフ。さすが明智くん、やっと気がついたようだね」

レフリーの縞々のユニフォームから、ぴろりとシッポがのぞく。

さっきまで木彫りの船長みたいな顔だったのに

メイクをした北斗晶みたいな形相になっている。

しまった。こいつはレフリーなんかじゃない。

もっとはやく気がつくべきだった。

こいつは、忍者ダイナシくんだ。

「にんにん(悪)」

こころのスキマに忍び込み、人々の「ケンゼン」を

「ダイナシ」にすり替えてしまう極悪非道のはぐれ忍者め。

今夜こそおまえを成敗してくれるわ。

「モヒートッ、モヒートッ、カイピロスカッ」

ちがうちがうそうじゃない。注文じゃないんだ。

「モヒートッ、モヒートッ、カイピロスカッ」

やめろ、やめてくれ、もうなんだか気持ちが悪い。

「モヒートッ、モヒートッ、カイピ・・・・・・・・・・・・」

ぐえ〜。





「お客さん、お客さん、お会計いっスカ?」

タクシーの運転手に肩をゆさぶられ我に返る。

いつの間にタクシーに乗ったのだろう。

「お客さ〜ん、つ・き・ま・し・た・よ〜」

そうさ、ここはもうピリオドの向こう側。

おれはやっと辿り着いたんだ。ケンゼンな世界に帰ってきたんだ。

はやくお金を払って家に帰ろう。家に帰ってフトンで寝よう。

タクシーを降りてふらふら歩いていると

ミラー越しに見えた運転手の顔が

木彫りの船長っぽかったことに気がつく。

「ふっ、まさかね」

燃えるような吐息で妄想をかき消し

コンビニで水を買って家路を急ぐ。

でもなにかがおかしい。

そういえば、コンビニの店員も木彫りっぽかったぞ。

まさか、まさか、まさか・・・・・・・・・。





「フフフフフ。さすが明智くん、やっと気がついたようだね」

だ、ダイナシくんだ。

なぜだ。俺は今タクシーを降りて水を買ったはずなのに。

「にんにん(悪)」

やめてくれ。

「にんにん(悪)」

や、やめてくれ。

「にんにきにきにきにんにきにきにき(悪)」

ぐえ〜。








翌日、出社は17時すぎ。

もちろんすべてはダイナシでした。

みなさま、カラダを大切に。




にんにん(涙)










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